冬になると猛威を振るうウィルス
それに対抗するために
建築士としてアドバイスできることはないかと
考えてみました。
室内環境について書いてみたいと思います。
目次
空気
湿度を考える際に二つのカテゴリーにわけます。
- 湿り空気
- 乾き空気
湿り空気
空気中の水分です。
- 水(水蒸気,H2O)
乾き空気
空気中の水以外の物質です。
- 窒素(N2)
- 酸素(O2)
- 水素(H2)
- 二酸化炭素(CO2)
- アルゴン(Ar)
- ヘリウム(He)
湿度
湿度は大きく2つのカテゴリーにわけられます。
- 相対湿度(一般的に湿度といったら相対湿度を指します)
- 絶対湿度
絶対湿度は2つに分けることができます。
- 容積絶対湿度(一般的に絶対湿度といったら容積絶対湿度を指します)
- 重量絶対湿度
相対湿度[%]
実際の水蒸気量[ g ] / 飽和水蒸気量[ g ]
(飽和水蒸気量:空気中に含むことができる最大の水蒸気量)
容積絶対湿度[g / ㎥]
実際の水蒸気量[ g ] / 湿り空気[ ㎥ ]
重量絶対湿度(混合比)[%]
実際の水蒸気量[ g ] / 乾き空気[ g ]
温度によって変わる相対湿度
空気中に含まれる水蒸気量が一定でも、
相対湿度は温度によって変化します。
それは、温度によって飽和水蒸気量が変わるからです。
温度が上がる → 飽和水蒸気量が増す → 相対湿度は減る
温度が下がる → 飽和水蒸気量が減る → 相対湿度は増す
すなわち、相対湿度の数値では、
私達が呼吸している空気に含まれている水分量がどれくらいかは、
判断できません。
湿度100%ってどんな状態?
”湿度100%=水の中”とイメージされる方もおりますが、
そうではありません。
それ以上水が蒸発しない状態ということです。
”飽和水蒸気量” と ”実際の水蒸気量”が、
イコールだと湿度は100%ということになります。
湿度が100%を超えると水分は
水蒸気として存在できないので
水滴になります。
窓ガラスが結露するのは、
暖かい空気が、冷たい硝子に触れて
飽和水蒸気量が低下し、
それにより空気中の水蒸気が水になるからです。
ウィルスと細菌
ウイルスと細菌、違うことはわかっているけど、
何がどうちがうのか説明できる人は少ないようです。
細菌は自力で増殖することができますが、
ウイルスは自力で増殖できません。
なのでウィルス生きているものに取りつきます。
細菌は台所のまな板や、生乾きの洗濯物など
生命力のない物体にも存在してますが、
ウイルスは人間など生物の細胞の力を借りないと存在できません。
細菌による病として、
中耳炎や結核などがあります。
ウィルス性の病として、
インフルエンザウィルスやコロナウィルスが
原因のものが有名ですが、実は風疹もウィルスが原因です。
そして、厄介ことに細菌には抗生物質の投与が効果的ですが、
ウイルスは自力で生きていないので抗生物質は効果がないとされています。
ウィルスが好む環境
ウィルス性の病気が蔓延するのは、冬が多いですね。
冬というのは、どのような環境なのでしょう。
そう。低気温、低湿度です。
これまで、
この低気温、低湿度がウィルスが好む環境と
いわれてきました。
しかし最近の研究では
そうとも限らないということがわかってきました。
熱帯や亜熱帯の国では雨季に
インフルエンザが流行ることがあります。
日本でも2019年の夏から秋にかけて
インフルエンザが流行しましたね。
ということは、湿度(相対湿度)が多くても
ウイルスは存在しているということです。
そこで、ウイルスが好む環境として目安になるのが「絶対湿度」です。
この絶対湿度が、8g/㎥を超えたくらいで
ウイルスの類はかなり感染しにくくなってきます。
日本の冬季の室外の絶対湿度は、4g/㎥に届きません。
室内でもちゃんと加湿していなければ、6g/㎥くらいです。
暖房器具と湿度の関係
最近の暖房器具は、電気により発熱するものが主流になってきています。
エアコン、赤外線ヒーター、セラミックヒーター
これらは、水蒸気がまったく発生しません。
エアコンは凄く乾燥するという印象を
お持ちの方は多いと思います。
それは、風が身体にあたるからです。
しかし、気密や断熱をキチンとして
弱運転で暖が取れる家であれば、
体にあたる風量も弱くて済みますので
肌の乾燥は少なくてすみます。
エアコン嫌いの方は、この風が不快だから
だと思います。
この件のお話は、また別の機会に
詳しくお話させて頂きます。
ガスファンヒーターや石油ファンヒーター等は
燃料に水素が含有しています。
そのため燃焼という化学反応により
空気中の酸素と結びついて水が作られます。
電気トースターよりもガスレンジのグリルでパンを焼いたほうが、
しっとりふっくらするのはその為です。
現代では炭で暖を取るご家庭はほぼありませんが、
雑学として載せておきます。
炭には水素は含有しておらず
炭素を燃やすので水は作られません。
鰻や焼き鳥など水分を嫌う食べ物の調理に使われるのは
遠赤外線の効果だけでなく、そのような理由もあります。
湿度を管理しましょう。
ウィルスが好まない環境にするためには、
絶対湿度の管理がとても大切です。
ただ、問題なのが、
一般に市販されている湿度計では相対湿度しか計れません。
絶対湿度を測定できる湿度計を探してみましたが、
気軽に買える値段のものはなかなかありませんでした。
が、頑張って見つけました。
安価で手に入る絶対湿度計!“みはりん坊”という計測機です。
(暑い時期には熱中症の危険度も教えてくれます。)
この計測器に表示される数値を
こまめにチェックして室内の絶対湿度計を
常に8g/㎥以上に保つように心がけると
ウィルス対策に効果的です。
小さなお子様や、ご年配の方、あまり健康ではない方と
一緒にお住まいの方は特に注意してあげて下さい。
加湿器の種類と特徴
ひとくちに加湿器といってもいろいろな種類があります。
特徴を理解してお買い求め下さい。
超音波加湿器
おしゃれな雑貨屋さんや、家具屋さんで良くみかけるタイプです。
女性うけしそうなかわいいデザインの
機器の上から煙がモクモク出ているアレです。
水に振動を与えて細かい霧状にして放出しています。
煙のように見えるのは、霧です。
過熱してないので、火傷の心配がないのと、
消費電力が低いのが魅力です。
しかし、気を付けなくてならない点があります。
この、超音波式加湿器はタンク内に雑菌が繁殖しやすいのです。
部屋中に雑菌をまき散らしているかもしれません。
健康のために加湿しているはずが、不健康になる可能性があります。
スチーム加湿器
水を沸騰させて蒸気をだして加湿するタイプです。
ひと昔前はストーブの上にヤカンを乗せて加湿していましたね。
そのシステムを電気を使って行っています。
蒸気なので、触れるともちろん熱いです。
小さなお子様のいるご家庭は
特に気を付けないといけませんね。
そして、電気で加熱しているので、
消費電力がハンパないです。
毎日ほぼ終日使用していると、
月の電気代が万を超えることもあります。
気化式加湿器
気化とは、沸騰、蒸発、昇華のように、
物質が気体の状態に化けることの総称です。
- 沸騰は、液体が沸点以上の高温で起こる現象。
- 蒸発は、液体が沸点に至らない低い温度で起こる現象。
- 昇華は、個体が気体になる現象。
超ざっくり言うとこのような感じです。
ですが、気化式加湿器の気化は蒸発を意味しています。
蒸発による加湿を視覚的にイメージしやすいものは何かないかと
考えてみたらいいのがありました。
おなじみの消臭剤“消臭元”
蓋の下にろ紙(?)が垂れ下がっていて、
それが下に溜まった液体を吸いあげます。
そして少しずつ蒸発していきます。
気化式加湿器はそのろ紙部分に風をあてて蒸発を促進させます。
消費電力もファンを回すだけなので少なくてすみます。
それぞれの消費電力
上記3種の消費電力を比較すると
気化式を1とした場合、
超音波式は10、
スチーム式は60にもなります。
おわりに
湿度とウィルスについて述べてきました。
ご理解して頂けたでしょうか。
- 湿度は、相対湿度ではなく容積絶対湿度を指標としなければいけません。
- 絶対湿度が8g/㎥を超えるように調節しましょう。
- 加湿器にも種類があります。(お薦めは気化式加湿器です。)
ウィルス対策は環境を整えるも大切ですが、
自らの身体の免疫力アップが必須と言われています。
基礎体温を上げることが効果的です。
基礎体温が高いとウィルスに限らず
他の病気に対しても抵抗力が増します。
というか病気にかかりにくくなります。
基礎体温を上げるには筋肉量を増やすこと、
大きな筋肉を鍛えると比較的容易に基礎体温があがります。
大きな筋肉とは太ももや胸筋、背中の僧帽筋等です。
基礎体温があがると、寒さにも強くなります。
マッチョな方が薄着でいるのは筋肉を自慢しているのではなく、
寒くないからです^^
家の中の環境、自己の身体、
しっかり整えてウィルスに負けないよう頑張りましょう!