目次
地鎮(とこしずめ)
地鎮祭(ぢちんさい)
万葉読みで「とこしずめのまつり」と読みます。
その土地の神様を鎮める祭りです。
「鎮める(しずめる)」ということは
祭らないでいれば、「荒ぶる」ということになります。
古来から我が日本にはあらゆるものに
神々が宿っているという考えがあります。
そこに八百万神(やおよろずのかみ)が存在するのです。
あなたも神の存在を感じる事があると思います。
都会を離れ山の頂に立てば、
神々しい風景や、研ぎ澄まされた空気を
感じることがあるでしょう。
大自然の中でなくても
街の中でもふとした瞬間に
感じることがあると思います。
我々の言う神とは、
日本以外の国の一神教の神とは意味が違います。
我々日本人の感じる神とは、
己であり、宇宙であり、大地であり、
自然であり、思想であり、文化、風習です。
神という言葉を意識せずとも、
日々の生活の中で無意識に神と対話をし、
祈り、敬っています。
それが日本に産まれた私達に
インストールされているOSです。
そして、これからあなたが家を建てる土地に宿っている神様に対し、
家を建てることの、お許しを乞うわけです。
そして工事の安全と、
これからここで営まれる生活が良きものとなるように
祈祷します。
人に対しても関係者に挨拶もしないで、
勝手に事を進めることはないですよね。
あなたの土地の神様にもきちんと挨拶をしましょう。
何もしないというのは、無礼でもありますし、
あなた自身も気持ちが悪いと思います。
前記しましたように、
神を感じながら生きているのが日本人です。
行わないと気が済まないのでありませんか?
大袈裟な事をする必要はありません。
気持ちの問題です。
これから末永くお世話になる土地の神様に心をこめてご挨拶を…
個人住宅に限らず大規模な公共建築、
最新鋭の技術を駆使して建てられる建築物や土木工事の際にも行われます。
科学・技術がいかに発達しようとも、
神々を祀る行為を蔑ろにすることはありません。
招かれる神様
ここに招かれる神様は、大地を司る「大地主神(おおとこぬしのかみ)」、そして、あなたの土地に祀られている「産土神(うぶすなのかみ)」になります。
「大地主神(おおとこぬしのかみ)」
(大辞林より)
古事記に記された出雲神話の主神。
日本書紀では大己貴神おおなむちのかみ。
素戔嗚尊すさのおのみことの子孫。
少彦名神すくなびこなのかみらとともに、国土を造って経営し、皇室の祖先に国を譲った。
後世、大黒天と混同され福の神とされる。
「産土神(うぶすなのかみ)」
(大辞林より)
生まれた土地を守護する神。近世以降、氏神・鎮守の神と同一視されるようになった。
祭場
土地の四方に竹を立て注連縄を巡らせます。
その中に神籬(ひもろぎ)を立てます。
神籬は榊の大きな枝に紙垂(しで)と
木綿か麻紐を取り付けたものをいいます。
神さまが本来おられる所から、
儀式の時にだけ来ていただく仮の座です。
祭場には円錐状に砂や土を盛った「忌砂(いみずな、斎砂とも書く)」を作ります。
ここが地鎮の儀という、地鎮祭特有の儀式の舞台となります。
服装
地鎮祭に参列する際の服装は、礼装が望ましいです。
着物を着られる場合は、紋付羽織袴や白襟紋付になります。
しかし、最近ではここまでする方はあまりおりません。
ジーパンやジャージ、サンダル履き等はまずいですが、
最低限のマナーを弁えた服装で参列していただければいいと思います。
お供え物
地鎮祭に限らず、祭典には必ずお酒を用意します。
日本酒が基本となりますが、
地域によっては焼酎等のお酒を用意するところもあるようです。
お酒には奉献(ほうけん)と書かれた熨斗(のし)をつけます。
お酒以外にはお米、そして海のもの(魚)、山のもの(野菜)等を用意しますが、
お願いする神主さんに、事前に準備するものを確認したほうがよいでしょう。
神主さんが用意してくれるところもあるようです。
式次第(しきしだい)
一、修祓(しゅばつ)…神主が祭典に奉仕する人と参列者を祓い清めます。
二、降神(こうしん)の儀…神さまにお願いし、神籬に降りてきてもらう儀式。
三、献饌(けんせん)…神さまにお供えを捧げる儀式。
地鎮祭では神酒と水の入った容器の蓋を外す、略式の方法を取ることが多いです。
四、祝詞奏上(のりとそうじょう)…神主が神さまに建築の許可と土地の守護を願う
祝詞を読み上げます。
五、四方祓(しほうはらい)の儀…神主が土地の四方を祓い清めます。
六、地鎮の儀…
〇刈初(かりぞめ)の儀…忌鎌(いみかま)を用いて草を刈り取る動作を行います。
草刈初(くさかりぞめ)の儀とも言います。
〇穿初(うがちぞめ)の儀…忌鋤(いみすき)を用いて土を耕す動作をします。
〇鍬入(くわいれ)の儀…忌鍬(いみくわ・ゆぐわ)を用いて土を耕す動作をします。
七、玉串拝礼(たまぐしはいれい)…玉串を持ち、神前に捧げます。
一)神職に軽く一礼し玉串を受けます
二)右手で根本を上から持ち、左手で先を下から持ちます
三)少し肘を張り、胸の高さに持ちます
四)神前に進み一礼します
五)玉串を時計回りに九十度回し、左手を下げて元を持ち
祈念を込めます
六)玉串を更に時計回りに回し、根本を神前に向け
玉串の中程を下から両手で支えてお供えします
七)姿勢を正し、2回お辞儀をします
八)手を合わせ右手を少し引き、二度拍手します
九)右手を戻します
十)最後に一度お辞儀をします
玉串の作法、動画解説(YouTube)
八、徹饌(てっせん)…供物を下げます。
九、昇神(しょうしん)の儀…儀式が終わったので、
仮の座である神籬から神さまがお帰りになられます。
鎮物(しずめもの)
忌物(いみもの)と呼ばれることもあります。
土産神などに土地を使うことの許しを得るため、
地中に納めるものです。
鎮物を埋めるタイミングは、地域や神社によって違いがあります。
地鎮の儀の最中に行われる場合もありますが、
工事の進捗や現場状況により様々です。
後日、施工業者によって行われことが多いです。
かかる時間
神社によって様々ですが、概ね一時間くらいが多いと思います。
地鎮祭は普通の祭典にはない穿初などの儀式があるため、
時間が長くかかる場合があります。
おわりに
地鎮祭について書いてきましたが、なんとなく理解できたでしょうか。
建売の住宅や、兼価格住宅では行われないことが多いようですが、
僕個人の意見としてはどんな形であれ行ったほうがいいと思います。
出来上がってから買うような場合は
地鎮祭を行うタイミングがないわけですが、
引っ越しをする前でも、入居直後でもいいので、
何かしらの儀式は行いたいものです。
四隅にお酒や米、塩をまくなりして、
土地の神様に一言ご挨拶をして頂きたいものです。
このような場合の正解の形があるのか、
このタイミングでやる意味があるのかはわかりませんが、
気持ちを込めてそこに住まうことが出来る感謝の気持ちを
土地の神様にお伝えしたいものです。
余談ですが、柏手(かしわで)を打つ際にキレイな音がでるとカッコいいです^^
澄んだ通る音がでるように練習しておくといいですね。
(ちなみに、凶事の際には音を出さないようにするのが作法です。)
それと複数人で行う柏手を打つとき、
例えば設計事務所や工事業者の関係者が大人数で出席する場合、
代表が前にでて祭壇に玉串を捧げます。
その時代表以外の社員は代表者の後ろにたったり、
自分の席を動かずにその場で立ったままで、
代表が玉串を捧げおわるの待って
その後、皆で柏手を打つのですが、
それが揃ってないとカッコわるいです。
キレイな音で社員全員がバシッと揃うと、
なんかデキる会社っぽくていいです^^